※ 変な話 ※
※ 意味は無いから、意味が無い ※
南北さんは、実のところ不眠症だと思う
今夜もわざわざ僕の部屋の乗り込んで、僕のベッドでうだうだと唸っている
「眠れない、眠れない」
「その声で僕が眠れません」
「安眠できるヤツは死ねばいいのに」
「安眠を妨げる人が死ねばいいのに」
何度も寝返りを打っては、あーとか、うーとか唸っている
「眠れないにしても、自分の部屋でやってくださいよ」
「枕が無い」
「買ってください」
「あの枕じゃなきゃダメなんだ」
そして、まくら、まくら、と意味もなく繰り返す
その呟きの数を数えて、僕は眠りについた
「おや、お久しぶりですね」
宿舎の食堂で見かけた人影に声をかけた
「んあぁー、副都心か・・・」
彼は首を鳴らしながら僕を見た
その目元にはくっきりとクマが出来ている
「連日、外泊で大変ですね」
「んー、新車両の調整だから仕方ねぇよ」
うどんをすすり、ため息をヒトツつく
「早くコッチに帰りてぇんだけどな」
「へぇ」
「あっちの枕は使い慣れなくて・・・」
「それで寝不足なんですか」
目の下のクマを示すと、渋い顔で頷く
「コッチに来たついでに、枕だけも持っていくか」
「枕抱えて、ココから千葉まで行くんですか?」
「ちょっと不恰好だな」
笑った顔に、僕も笑みを向ける
「あちらの環境を整えるより、
早くこっちに帰ってきてあげてください」
「え?」
「アナタが居ないと眠れない人が居るんですよ、枕さん」
枕さんはきょとんと目を丸くした
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南北の安眠枕は東西って言う、それだけ